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2011年7月に作成された記事

2011年7月25日 (月)

JAXAの技術課題(オープンラボより)

今回は、私の本業の話です。

私が現在所属しているのは、JAXA産業連携センターというところで、この部署は、宇宙航空の技術を地上用の製品やサービスに応用したり、新たな宇宙ビジネスを立ち上げたり、日本の宇宙産業の国際競争力を高めるための施策を行ったりしています。

で、その一環として、今月5日に「JAXAオープンラボ公募」という募集を始めました。その詳細は、WEBを見てもらうこととして、今回の目玉は「技術提案」という募集の再開です。

この「技術提案」募集にあたって、JAXAは、今後の宇宙航空分野の研究開発のために必要な技術課題を提示しました。

http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/offer/skill_theme.html

この技術課題には、宇宙用冷蔵庫があったり、ICタグがあったり、ちり・ほこりの出ない衣服や、再突入に耐えられる画像記録システムがあったりと、我々が見ても興味を引く、技術がいっぱいあります。また、これを通して、今、宇宙航空分野が必要としている技術を知ることができます。

私たちは、この募集で、高い技術力をもつ、新たな宇宙航空分野のプレーヤーが見つかると良いな、と思っています。

 

 

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2011年7月12日 (火)

宇宙の効用(その2)~液体水素

7月9日に、スペースシャトル・アトランティス号の最後の打上げがありましたが、みなさんご覧になりましたか? 私は、JAXA相模原キャンパスで「宇宙教育テレビ」の生配信を通して、放送をご覧になっている仲間と一緒に打上げを見ることができ、感無量でした。心に焼きつくフライトでした。

http://www.youtube.com/watch?v=qNXOFPILRmQ&feature=channel_video_title

 

さて、そんなこんなでバタバタしている先週でしたが、相模原キャンパスの他に、北九州にも出張があり、その際、北九州水素タウンを見てきました。

北九州水素タウンは、将来の水素エネルギー社会を目指し、製鐵所で製造された水素をエネルギーとしている街です。水素燃料電池ハウスには、実際に人が住み、燃料電池自動車に液体水素を補充するための、ステーションもありました。

http://www.f-suiso.jp/kitakyushu_Hytown/pdf/sestubi.pdf

燃料電池アシスト自転車にも乗せてもらいましたが、とても快適です。現在、燃料電池自動車も開発もどんどん進んでいますが、これからは、燃料電池の時代ですね。

 

ということで、前置きが長くなりましたが、今日の宇宙の効用は「液体水素」です。液体水素は、燃料電池のエネルギーの源で、現在、クリーンエネルギーの候補として、注目を集めています。昨年までに日本全国に14か所の水素ステーションがつくられ、燃料電池(水素)自動車の普及が期待されているところです。

で、何故、液体水素が、宇宙と関係あるかというと、みなさん既にご存知の通り、ロケットの燃料でもあるからです。H-IIAロケットは、液体水素を、液体酸素で燃焼させて、宇宙に行きます。この液体水素は、H-Iロケットの頃からロケットの燃料として使われています。

実は、日本で液体水素の製造が始まったのは、1958年なのですが、実用的に使われ始めたのは、1976年頃からの宇宙開発事業団(NASDA)でのロケット開発のための利用で、1978年頃に本格的な水素製造工場が稼働し始め、1986年には液体水素を燃料に、H-Iロケットが打ち上がりました。この頃の液体水素は、全製造量の90%をNASDAが利用していたそうです。

現在は、液体水素はクリーンエネルギーとして注目を浴び、JAXAの利用は、国内の全製造量の10%程度になってしまったそうなのですが、要は、ロケットが、最初に、液体水素を燃料として使い始め、その結果、製造設備が本格化し、たくさん液体水を作れるようになったので、現在のように燃料電池のエネルギー源として、日本各地でも利用されるようになってきたのです。

これは、ある意味、宇宙開発があったからこそ、液体水素の普及が進んだといえます。ということで、水素社会は宇宙の効用と言ってもいいのではないでしょうか。

 

最後にお知らせですが、今月初めから、「JAXAオープンラボ公募」の提案募集を始めました。この公募は、宇宙・航空発の技術を使って、我々の生活などに役に立つビジネスを提案するものです。8月2日まで募集していますので、興味ある方は、ホームページをのぞいて見て下さい。

http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/offer/about.html

 

 

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2011年7月 2日 (土)

宇宙の効用

「『宇宙』って、我々の生活にどんな風に役に立って、どんな意味があるの?」
こんな質問を良く受けます。
私が初対面の人に良く言われるのは、「夢があって良いお仕事ですね!」
JAXAは、国の機関なので、国から予算をもらって活動しています。JAXAのプロジェクトには、それぞれ必要性や緊急性があって、我々の生活に役立つ、ということが認められて予算がつくのだけれど、宇宙には、JAXAがやっている研究開発のみならず、人々の役に立っている側面がいっぱいあるはず。
そんな思いから「宇宙の効用」と題して、今後、「宇宙」と関わる意味をいろいろ書いてみたいと思います。

 

で、今回は、宇宙の「目線」の効用。
私は学生時代登山をやっていて、一年の1/4位は山の中にいました。私はあまり良い学生ではなかったので、下界(「地上」のことをそう呼んでいました。)にいると、人間関係や仕事(バイト)のことなど、いろいろ悩みも多かったのですが、そんな時には山の上から町を見ます。
山の上から町を見ると、眼下には沢山の家が広がっています。その一つ一つの小さく見えるお家にいろんな人が住んでいて、いろんな人生があって、いろんな諍いや楽しみがあるんだなあ、とか考えると、なんか狭い範囲でいろいろ悩んでいた自分が小さく見えてきて、もっと大きな視野で物事を考えよう!って気になります。
私にとっては、山は、小さなことから自分を解放する場でした。
そして、山より高いところに行ってみたくて、宇宙の仕事につきました。
その後、毛利宇宙飛行士が宇宙に行って、人の目線での宇宙からの地球を見せてくれれました。それは、山からでは気づかない、国境のない地球でした。 
そう、宇宙から地球を見ると、国境のない、薄い大気の層に守られて、そんな中で人類が一所懸命暮らしているのです。
宇宙ステーションの中で、各国首脳が集まってサミットやったら、戦争なんかやめて、地球を大事にすることをみんな真剣に考えるのではないか、と社内の人とよく話したものです。
まあ、そんな大きい話でなくても、日常の些細な事がつまらなく思えてくるかも知れません。宇宙は人々の心を大きくします。
宇宙の効用として、まずは、そんなことを考えてみました。

 

閑話休題

 

第一期水循環変動観測衛星(GCOM-W1)というちょっと難しい名前の人工衛星が愛称募集を始めました。
https://www.gcom-w1-campaign.jp/
この衛星がどんな効用を持つかは、別の機会に説明するとして、少なくとも自分の名付けた衛星が宇宙に行くって、ワクワクしますよね。ワクワクしたい方は、是非ご応募くださいませ。


 
  

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