カテゴリー「宇宙の効用」の記事

2011年12月11日 (日)

宇宙の効用(その3)〜生命の安心感〜

昨晩は、皆既月食で多くの人が空を見上げていたと思います。
私も久しぶりに夜空をずっと眺めていました。
月だけでなく、オリオン座や冬の大三角形、おうし座、
カシオペア、木星など、満天の星に囲まれました。


夜空を見上げていると、
何かに包まれる安心感とともに、
心が落ち着きますよね。


先週、仕事の関係で、久しぶりにプラネタリウムを見ましたが、
都心では、科学プログラムより、
リラクゼーションやカップル向けが人気あるそうです。
都会の喧噪を離れて、自分を取り戻しに来るのでしょうか。


宇宙の起源は137億年前、太陽系の歴史が46億年。
自分たちが生まれるずっとずっと前から、宇宙は存在して、
我々の命は、その中の一瞬。
でも、その生命は、宇宙と繋がっているから、
満天の星空を見ていると、
自分が宇宙の中の一つの存在であることを思い出し、
生命の源、例えば、母親の胎内にいるような安心感を
感じるんでしょうね。
きっと理屈じゃないんだと思います。


皆既月食をみながら、こんなことを考えていました。

 

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2011年7月12日 (火)

宇宙の効用(その2)~液体水素

7月9日に、スペースシャトル・アトランティス号の最後の打上げがありましたが、みなさんご覧になりましたか? 私は、JAXA相模原キャンパスで「宇宙教育テレビ」の生配信を通して、放送をご覧になっている仲間と一緒に打上げを見ることができ、感無量でした。心に焼きつくフライトでした。

http://www.youtube.com/watch?v=qNXOFPILRmQ&feature=channel_video_title

 

さて、そんなこんなでバタバタしている先週でしたが、相模原キャンパスの他に、北九州にも出張があり、その際、北九州水素タウンを見てきました。

北九州水素タウンは、将来の水素エネルギー社会を目指し、製鐵所で製造された水素をエネルギーとしている街です。水素燃料電池ハウスには、実際に人が住み、燃料電池自動車に液体水素を補充するための、ステーションもありました。

http://www.f-suiso.jp/kitakyushu_Hytown/pdf/sestubi.pdf

燃料電池アシスト自転車にも乗せてもらいましたが、とても快適です。現在、燃料電池自動車も開発もどんどん進んでいますが、これからは、燃料電池の時代ですね。

 

ということで、前置きが長くなりましたが、今日の宇宙の効用は「液体水素」です。液体水素は、燃料電池のエネルギーの源で、現在、クリーンエネルギーの候補として、注目を集めています。昨年までに日本全国に14か所の水素ステーションがつくられ、燃料電池(水素)自動車の普及が期待されているところです。

で、何故、液体水素が、宇宙と関係あるかというと、みなさん既にご存知の通り、ロケットの燃料でもあるからです。H-IIAロケットは、液体水素を、液体酸素で燃焼させて、宇宙に行きます。この液体水素は、H-Iロケットの頃からロケットの燃料として使われています。

実は、日本で液体水素の製造が始まったのは、1958年なのですが、実用的に使われ始めたのは、1976年頃からの宇宙開発事業団(NASDA)でのロケット開発のための利用で、1978年頃に本格的な水素製造工場が稼働し始め、1986年には液体水素を燃料に、H-Iロケットが打ち上がりました。この頃の液体水素は、全製造量の90%をNASDAが利用していたそうです。

現在は、液体水素はクリーンエネルギーとして注目を浴び、JAXAの利用は、国内の全製造量の10%程度になってしまったそうなのですが、要は、ロケットが、最初に、液体水素を燃料として使い始め、その結果、製造設備が本格化し、たくさん液体水を作れるようになったので、現在のように燃料電池のエネルギー源として、日本各地でも利用されるようになってきたのです。

これは、ある意味、宇宙開発があったからこそ、液体水素の普及が進んだといえます。ということで、水素社会は宇宙の効用と言ってもいいのではないでしょうか。

 

最後にお知らせですが、今月初めから、「JAXAオープンラボ公募」の提案募集を始めました。この公募は、宇宙・航空発の技術を使って、我々の生活などに役に立つビジネスを提案するものです。8月2日まで募集していますので、興味ある方は、ホームページをのぞいて見て下さい。

http://aerospacebiz.jaxa.jp/jp/offer/about.html

 

 

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2011年7月 2日 (土)

宇宙の効用

「『宇宙』って、我々の生活にどんな風に役に立って、どんな意味があるの?」
こんな質問を良く受けます。
私が初対面の人に良く言われるのは、「夢があって良いお仕事ですね!」
JAXAは、国の機関なので、国から予算をもらって活動しています。JAXAのプロジェクトには、それぞれ必要性や緊急性があって、我々の生活に役立つ、ということが認められて予算がつくのだけれど、宇宙には、JAXAがやっている研究開発のみならず、人々の役に立っている側面がいっぱいあるはず。
そんな思いから「宇宙の効用」と題して、今後、「宇宙」と関わる意味をいろいろ書いてみたいと思います。

 

で、今回は、宇宙の「目線」の効用。
私は学生時代登山をやっていて、一年の1/4位は山の中にいました。私はあまり良い学生ではなかったので、下界(「地上」のことをそう呼んでいました。)にいると、人間関係や仕事(バイト)のことなど、いろいろ悩みも多かったのですが、そんな時には山の上から町を見ます。
山の上から町を見ると、眼下には沢山の家が広がっています。その一つ一つの小さく見えるお家にいろんな人が住んでいて、いろんな人生があって、いろんな諍いや楽しみがあるんだなあ、とか考えると、なんか狭い範囲でいろいろ悩んでいた自分が小さく見えてきて、もっと大きな視野で物事を考えよう!って気になります。
私にとっては、山は、小さなことから自分を解放する場でした。
そして、山より高いところに行ってみたくて、宇宙の仕事につきました。
その後、毛利宇宙飛行士が宇宙に行って、人の目線での宇宙からの地球を見せてくれれました。それは、山からでは気づかない、国境のない地球でした。 
そう、宇宙から地球を見ると、国境のない、薄い大気の層に守られて、そんな中で人類が一所懸命暮らしているのです。
宇宙ステーションの中で、各国首脳が集まってサミットやったら、戦争なんかやめて、地球を大事にすることをみんな真剣に考えるのではないか、と社内の人とよく話したものです。
まあ、そんな大きい話でなくても、日常の些細な事がつまらなく思えてくるかも知れません。宇宙は人々の心を大きくします。
宇宙の効用として、まずは、そんなことを考えてみました。

 

閑話休題

 

第一期水循環変動観測衛星(GCOM-W1)というちょっと難しい名前の人工衛星が愛称募集を始めました。
https://www.gcom-w1-campaign.jp/
この衛星がどんな効用を持つかは、別の機会に説明するとして、少なくとも自分の名付けた衛星が宇宙に行くって、ワクワクしますよね。ワクワクしたい方は、是非ご応募くださいませ。


 
  

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